OPTI
越境ECは本当に伸びているのか
越境EC

越境ECは本当に伸びているのか

OPTIの淵上です。 先日PIVOTさんの番組「& questions」に出演し、Shopify Japanの熊澤さんと一緒に、越境ECとTAXテクノロジーについてお話しさせていただきました。 番組では限られた時間の中でかなり多くの話題に触れたため、本稿ではより詳細に考察してみたいと思います。 今回は「第1章:越境EC市場が急速に拡大している背景」です。TAXテクノロジーや電子インボイスの話は、次回に譲ります。 数字で見る越境EC市場の伸び 「越境ECが伸びている」というのは、数年前から繰り返し言われてきた話です。しかし、最近の成長ペースは、以前とは次元が異なると見ています。 McKinseyのレポートによれば、越境ECは2030年までに1〜2兆ドル規模の市場に成長すると予測されています(参考:McKinsey "Signed, sealed, and delivered")。Statistaの調査では、越境EC市場は2025年時点ですでに約4兆ドルに達しているとされています(参考:Statista "Cross-border e-commerce")。 複数の調査機関
4 min read
EU市場の変化と、日本企業の“動く速さ”の話
越境EC

EU市場の変化と、日本企業の“動く速さ”の話

OPTIの淵上です。 EU市場における越境ECの競争環境が、静かに変わりつつあります。規制の強化によって、対応が不十分な事業者が淘汰される一方、ルールを遵守できる事業者には相対的に有利な状況が生まれています。 日本企業にとって追い風と言えなくもない局面です。しかし、追い風を実際の機会として活かせるかどうかは、別の問題ではないでしょうか。 本稿では、私どもが現場で日本企業と中国企業の両方を支援する中で感じていることを、率直に書いてみます。 中国企業のスピード感は、正直すごい 私どもOPTIは、日本企業だけでなく中国企業のクライアントも多く抱えています。VAT登録、GPSR対応、EPR登録……手がける業務の内容は同じです。 しかし、意思決定と行動のスピードに顕著な差があります。 中国の事業者は、「EU市場に出る」と決定すると、必要な書類を収集し、VAT登録を申請し、現地の責任者を手配し、場合によってはEU法人まで設立する。これを数週間で完了させます。 「この書類が不足しています」とお伝えすると、翌日には揃っています。「この点についてはどうされますか?」と確認すると、即座に
5 min read
AI時代の越境EC、"売る前の準備"とは
越境EC

AI時代の越境EC、"売る前の準備"とは

OPTIの淵上です。 AIが商品を比較・推薦する時代が現実のものになりつつあります。越境ECにおいても、「AIに選ばれる事業者」と「選ばれない事業者」の差が、今後ますます可視化されていく可能性があります。 そのとき問われるのは、商品の品質や配送の速さだけではないかもしれません。制度面の準備——VAT登録、製品安全規制への対応、包装材のコンプライアンス——こうした「見えにくい準備」が、AIによる評価軸に組み込まれていく可能性があると見ています。 本稿では、「売ること」の前に整えるべき準備について、私どもが現場で見てきた事例を交えて考察してみます。 越境ECの準備って、何を想像しますか 「越境ECを始めたい」とご相談にいらっしゃる事業者の方々に、まず何から着手されたかを伺うと、概ね以下のような答えが返ってきます。 「Shopifyでストアを作りました」 「商品ページを英語にしました」 「Amazonに出品しました」 それ自体は適切な第一歩といえます。しかし、私どもが「販売先の国でVAT登録はお済みですか?」と確認すると、ほぼ全ての方が「それは何でしょうか」という反応をされま
6 min read
ViDA(VAT in the Digital Age)|EUのVAT制度がデジタル時代に向けて大きく変わる
越境EC

ViDA(VAT in the Digital Age)|EUのVAT制度がデジタル時代に向けて大きく変わる

越境ECの税務に携わっていると、常に制度の先を読むことが求められます。現在、EU VAT制度の最大の変革と言われているのが「ViDA(VAT in the Digital Age)」です。2025年3月に欧州理事会で最終合意に達したこの改革は、2030年代にかけて段階的に施行される予定で、越境ECセラーのオペレーションや税務コストにも少なくない影響を与えると予想されます。 ViDAとはなにか ViDA(VAT in the Digital Age)は、欧州委員会が2022年12月に提案したEU VAT制度の包括的デジタル化改革パッケージです。2025年3月の欧州理事会での最終合意をもって法制化が確定しました。 背景には、EU加盟国のVATギャップ(本来徴収すべきVATと実際の徴収額の差)の深刻さがあります。欧州委員会の推計では、2022年のEU全体のVATギャップは約610億ユーロに上ります。このうち相当部分が、デジタル取引の不申告や越境取引の申告漏れによるものとされています。たとえばマルタのVATギャップは24.2%と加盟国中でも特に高い水準であることが知られており、加盟国全
7 min read
Japan Finds byGMOに見る越境ECの新しい始め方と、セラーが知っておくべき税務の話
越境EC

Japan Finds byGMOに見る越境ECの新しい始め方と、セラーが知っておくべき税務の話

OPTIの淵上です。 GMOグローバルECが提供する越境EC支援サービス「Japan Finds byGMO」が、注目を集めています。国内のEC事業者がmakeshopの商品情報をそのまま連携するだけで、eBayをはじめとする海外ECモールへの出品・販売が可能になるというサービスです。 GMOグローバルECの取締役である横川広幸さんとは旧知の仲で、越境EC業界の動向について意見交換をさせていただく機会も多くあります。横川さんは同社のブログでも越境ECに関する鋭い考察を発信されており、業界への貢献は大きいものがあります。 「テストマーケティング」としての越境ECという発想 Japan Findsの興味深い点は、越境ECを「まず試してみる」ためのプラットフォームとして位置づけていることです。 従来、海外販売を始めるには、多言語対応、決済、物流、顧客対応と、相応の準備とコストが必要でした。特に中小企業にとっては、「やってみたいが、失敗したときのリスクが大きい」という心理的なハードルが参入障壁となっていたのではないでしょうか。 Japan Findsでは、商品登録から多言語翻訳、
4 min read
2025年以降のアメリカ越境EC|関税の混乱がセラーに何をもたらしたか
越境EC

2025年以降のアメリカ越境EC|関税の混乱がセラーに何をもたらしたか

2025年は、アメリカ向け越境ECにとって「激動の年」と後から振り返られる年になるかもしれません。関税率の頻繁な変更、HTSコード管理の重要性増大、de minimis規制の見直し——これらが重なり合い、アメリカ市場でのビジネスは以前とは別物になりつつあります。今回は私が感じているアメリカ越境EC市場の変化と、セラーへの影響を整理したいと思います。 関税率の「コロコロ変わる」現実 2025年を通じて、アメリカの対日本関税率は何度か変動しました。4月の24%発表、その後の90日猶予、そして15%前後への調整——数ヶ月のうちに大きく動いたのです。この「流動性」自体がセラーにとって大きなリスクです。DDP配送で関税をセラー負担にしている場合、関税率が上昇すれば即座にマージンを圧迫します。私のクライアントの中にも、DDP設定のまま税率変更を見逃してしばらく赤字で販売し続けていた、という方がいました。 HTSコードの重要性増大と誤申告リスク 以前は「とりあえず一番近いコードで」という感覚で申告していたセラーも多かったかもしれません。しかし2025年以降、CBP(米国税関国境保護局)の
4 min read
AIエージェント導入の前に知っておきたい、EUの3つの規制
AI

AIエージェント導入の前に知っておきたい、EUの3つの規制

OPTIの淵上です。 AIエージェントの活用が急速に広がっています。カスタマーサポートの自動化、商品推薦、在庫管理の最適化、さらには営業活動の自動化まで。越境ECの領域でも、AIエージェントを業務に組み込む企業が増えてきているように見受けられます。 こうした流れ自体は、ビジネスの効率化と競争力強化の観点から前向きに捉えるべきものだと考えます。しかし、AIエージェントの導入を検討される際に、あわせて把握しておくべき規制の動きがあります。 本記事では、EUを中心に進行している3つの規制――サイバーレジリエンス法(CRA)、EU AI法、GDPR――について、AIエージェントとの関連で整理します。 なお、本記事は法的助言を目的としたものではありません。具体的な対応については、各分野の専門家にご相談ください。 サイバーレジリエンス法(CRA):デジタル製品のセキュリティ義務 EUのサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act / CRA)は、「デジタル要素を含むすべての製品」に対して、セキュリティ要件を義務づける規制です(参考:European Commiss
4 min read
DDPとDDU、越境ECセラーはどちらを選ぶべきか|2025年の配送戦略
越境EC

DDPとDDU、越境ECセラーはどちらを選ぶべきか|2025年の配送戦略

越境ECを続けていると、必ずぶつかる問題があります。「DDPで送るべきか、DDUで送るべきか」——この問いは、関税コストの分担をめぐる永遠の議論と言っても過言ではないかもしれません。2025年に入り、eBayがDDP誘導を強めていることで、この問題が再び注目されています。今回は私がセラー仲間から聞いた実体験を交えながら、両者のメリット・デメリットを整理したいと思います。 DDPとDDUの基本 DDP(Delivered Duty Paid)は、輸出側(セラー)が関税・輸入税・手数料をすべて負担し、バイヤーのドアまで届ける方式です。バイヤーにとっては「表示価格がすべて」で追加費用なしという安心感があります。DDU(Delivered Duty Unpaid)は、関税をバイヤー側が負担する方式です。バイヤーが配達前に通関手数料と関税を支払う必要があり、これが想定外の請求として不満につながるケースがあります。 eBayのDDP誘導の動き 2024年後半から2025年にかけて、eBayはDDP配送を選択したセラーに対して検索順位での優遇や「関税込み」バッジの表示など、実質的なDDP
3 min read
Peppolとは何か|デジタルインボイスの世界標準と各国の「方言」問題
越境EC

Peppolとは何か|デジタルインボイスの世界標準と各国の「方言」問題

越境ECの税務に携わっていると、最近避けて通れなくなってきたのが『デジタルインボイス』の話題です。私はかつて外資系ファームで欧州に滞在していた際、各国のインボイス制度の違いに驚いた経験がありますが、今やその違いがデジタルの世界でも再現されているように感じます。 今回は、デジタルインボイスの世界標準として注目される「Peppol(ペポル)」について、その概要と各国独自の「方言」問題、そして越境EC事業者への影響をお伝えしたいと思います。 Peppolとは何か Peppolとは、Pan-European Public Procurement OnLineの略称です。もともと2008年にEUの公共調達の電子化プロジェクトとして始まりましたが、現在は電子インボイスの国際的な交換ネットワークとして大きく発展しています。 運営はOpenPeppolという非営利団体が担っており、各国の認定アクセスポイントを通じて企業間でデジタルインボイスを安全にやり取りできる仕組みです。 Peppolが採用している「4コーナーモデル」は、送信者→送信側アクセスポイント→受信側アクセスポイント→受信者とい
5 min read
イタリアVAT登録の「€50,000保証金」問題|OPTIが実現するコストゼロの参入スキーム
VAT

イタリアVAT登録の「€50,000保証金」問題|OPTIが実現するコストゼロの参入スキーム

EU圏内でのEC販売を拡大する日本企業にとって、イタリアは大きな市場です。しかし、イタリアでのVAT登録には他のEU加盟国にはない独自のハードルが存在します。それが「財務保証金(Bank Guarantee)」の問題です。 本記事では、イタリアVAT登録の仕組み、なぜ高額なコストが発生するのか、そしてOPTIがどのようにしてそのコストを大幅に削減しているのかを解説します。 イタリアVAT登録の基本 EU域外の企業(日本企業を含む)がイタリアでVAT登録を行う場合、「税務代理人(Fiscal Representative)」の任命が義務付けられています。これは他のEU加盟国と同様ですが、イタリアでは税務代理人に対して追加の要件が課されています。 €50,000の保証金問題 2025年以降、イタリアの税務当局(Agenzia delle Entrate)は、EU域外企業の税務代理人に対し、€50,000(約800万円)の財務保証金の提出を義務化しました。この保証金はVIES(EU域内取引情報交換システム)への登録・維持に必要で、有効期間は36カ月です。 この保証金は銀行保証
3 min read
越境ECの返品トラブル|「偽物すり替え」「Payment Dispute」急増の実態
越境EC

越境ECの返品トラブル|「偽物すり替え」「Payment Dispute」急増の実態

越境ECを続けていると、返品は避けられない課題です。しかし最近、その質が変わってきているように感じます。単なる気が変わった、サイズが合わなかったという返品ならまだしも、偽物すり替え詐欺やPayment Dispute(支払い異議申し立て)が急増しているという話を、セラー仲間からよく聞くようになりました。今回はその実態と、私が考える実務的な対策をお伝えします。 高額品の返品で関税ダブルパンチ 例えば3万円の商品をアメリカに販売し、バイヤーが返品を要求した場合、国際返送料(30から80ドル程度)、日本への再輸入時の関税(場合によっては数千円)、eBayの返品手数料(一部ケース)を負担する可能性があります。私のクライアントが経験したケースでは、3万円の陶器を返品されたところ、返送料と再輸入関税で約1万5,000円のコストが発生したと聞きました。商品自体の仕入れ原価を合わせると完全に赤字です。フリーリターンポリシーを設定していたため、返送料もセラー負担になっていたのが致命的でした。 偽物すり替え詐欺の手口 越境ECで急増しているのが、高額品の「すり替え返品」詐欺です。バイヤーが正規
4 min read
GPSR(一般製品安全規則)と認定代理人(AR)|EU販売に必要な対応と確認事項の全体像
越境EC

GPSR(一般製品安全規則)と認定代理人(AR)|EU販売に必要な対応と確認事項の全体像

2024年12月13日、EU全域で「一般製品安全規則(General Product Safety Regulation / GPSR)」が本格施行されました。これにより、EU域内で消費者向け製品を販売するすべての事業者——EU域外の製造者を含む——に対して、新たなコンプライアンス義務が課されています。 本記事では、GPSRの制度概要、事業者に求められる対応事項、そしてEU域外事業者にとって特に重要な「認定代理人(Authorised Representative / AR)」の役割について解説します。 GPSRとは何か GPSRは、EU域内で販売されるすべての非食品消費者向け製品に対して、高い水準の安全性を確保することを目的とした規則です。従来のGPSD(General Product Safety Directive / 一般製品安全指令、2001年制定)を置き換える形で、より包括的かつ厳格な要件を定めています。 GPSDが「指令」であったのに対し、GPSRは「規則」であるため、EU全27加盟国で直接適用されます。各国の国内法への置き換えを待つ必要がなく、統一的なルールと
6 min read
トランプ関税24%の衝撃|日本の越境ECセラーは何をすべきか
越境EC

トランプ関税24%の衝撃|日本の越境ECセラーは何をすべきか

2025年4月初旬、トランプ大統領が日本への関税24%を発表した瞬間、私のもとには複数のクライアントから同日中に問い合わせが届きました。セラーコミュニティのSlackやLINEグループも一気に騒然となり、え、24%って本当?アメリカ向けの出品、全部止めた方がいい?という声が飛び交っていました。 私は大学時代にアメリカに留学していました。あの国の政策変動の速さ、一夜にして変わるルールへの慣れを、身をもって知っているつもりです。それでも今回の関税発表は、想定を超えるスピードと幅でした。 何が起きたのか:2025年4月の関税措置 トランプ政権は2025年4月2日(現地時間)、いわゆる「相互関税」政策の一環として、日本からの輸入品に対して24%の追加関税を課すと発表しました。中国製品には一部125%超の関税が課されており、日本はそこまでではないものの、かなり高い水準です。その後、90日間の猶予措置が発表され、日米交渉の結果として15%程度に落ち着くのではという観測も出ています。ただし本稿執筆時点での情報であり、状況は流動的です。最新の税率については必ずCBP(米国税関国境保護局)の公式
4 min read
あなたのブランド、海外で盗まれていませんか?|商標トロールの実態と日本企業が今すぐ取るべき対策
越境EC

あなたのブランド、海外で盗まれていませんか?|商標トロールの実態と日本企業が今すぐ取るべき対策

越境ECで海外進出を進める日本企業にとって、商品やブランドの「商標」は最も大切な資産のひとつです。しかし、その商標を第三者に先に登録されてしまう「商標トロール」の被害が後を絶ちません。特に中国をはじめとするアジア市場では、日本ブランドが狙い撃ちにされるケースが頻発しています。 本記事では、商標トロールの実態、過去の深刻な事例、日本企業が陥りがちな罠、そしてOPTIが提供する海外商標登録支援について解説します。 商標トロールとは何か 商標トロール(Trademark Troll)とは、他社のブランド名や商品名を、本来の権利者より先に商標登録し、その権利を利用して金銭を要求したり、正規品の販売を妨害したりする行為です。「冒認出願」「商標スクワッティング」とも呼ばれます。 商標制度は多くの国で「先願主義」(先に出願した者が権利を得る)を採用しているため、たとえ長年使用してきたブランドであっても、先に登録されてしまえば、その国では正規のブランドオーナーが自分の名前を使えなくなるという事態が生じます。 実際に起きた深刻な事例 無印良品(MUJI)vs 中国「無印良品」 日本の
4 min read
eBay magで多国展開する際の落とし穴|シッピングポリシーのバグに要注意
越境EC

eBay magで多国展開する際の落とし穴|シッピングポリシーのバグに要注意

トランプ関税の影響でアメリカ向け越境ECが難しくなっている今、EU・UK市場への注目が高まっています。そこで多くのセラーが活用しているのがeBayの多国出品ツール「mag(マグ)」です。便利な反面、いくつかの重大なバグや落とし穴があることがセラーコミュニティで話題になっています。今回はその実態をまとめます。 eBay magとは何か eBay magは、eBay.comに出品した商品を自動的に複数の国のeBayサイト(eBay.de、eBay.co.uk、eBay.frなど)に同期させるツールです。一度の出品作業で複数市場をカバーできるため、効率的な多国展開を可能にします。 2025年現在、日本のeBayセラーの間でもmag利用者は増加傾向にあります。特にEUのIOSS(輸入ワンストップショップ)登録との組み合わせで関税処理を簡素化できる点が注目されています。 EU向けの警告メール問題 magを使い始めたセラーからよく聞くのが「eBayからEU向け出品に関する警告メールが来た」という話です。EU規制対応(PSE/PSCマーク、GPSR、EPRなど)が強化される中、eBay
3 min read
Amazonアカウントが突然凍結される前に|GPSR・EPR・VAT対応が急務な理由
越境EC

Amazonアカウントが突然凍結される前に|GPSR・EPR・VAT対応が急務な理由

Amazonのアカウント凍結は予告なく起きる。「昨日まで普通に売れていた商品が今日いきなりリスティング削除された」「朝起きたらアカウントが停止されていた」という経験をしたセラーは少なくありません。規制対応の遅れがビジネスを止めるリスクは、年々高まっています。本稿ではAmazonの規制強化タイムラインと、GPSR・EPR・VATそれぞれの対応状況を客観的なデータで整理します。 Amazonアカウント凍結の実態 Jungle Scout「State of the Amazon Seller 2023」によれば、調査対象のAmazonセラーの26%が過去1年間にアカウントまたはASINの停止を経験したと回答しています。停止理由の上位は「ポリシー違反」(34%)、「知的財産権の問題」(22%)、「商品安全・コンプライアンス違反」(18%)です。 2022〜2024年にかけてAmazonはEU市場における規制対応要件の未充足を理由としたリスティング削除・アカウント停止を強化しており、特にGPSR・EPR・VAT未登録を理由とした措置が増加しています。停止期間中の売上損失は大きく、回復まで
5 min read
米国Amazonセラー必読|「エコノミックネクサス」を放置すると何が起きるか
越境EC

米国Amazonセラー必読|「エコノミックネクサス」を放置すると何が起きるか

2018年のSouth Dakota v. Wayfair判決は、米国の税務環境を根本から変えた。それまでは物理的拠点(倉庫・オフィス・従業員)がなければ州の売上税課税義務が生じないとされていたが、この判決によって「経済的なつながり」だけで課税義務が生じる「エコノミックネクサス」の概念が確立されました。米国Amazonセラーにとって、この変化の影響を正しく理解することは必須です。 South Dakota v. Wayfair判決(2018年)の解説 Wayfair判決以前、1992年のQuill Corp. v. North Dakota判決が「物理的拠点(フィジカルプレゼンス)がなければ売上税の課税義務なし」という原則を確立していました。しかしインターネット通販の拡大により、物理的拠点を持たないオンライン事業者が大量の売上を各州で上げているにもかかわらず課税されないという状況が生まれた。 2018年6月21日、米国最高裁はSouth Dakota州法を支持する判決を下し、南ダコタ州の「年間売上10万ドル超または取引200件超で課税義務が生じる」という基準を合憲と判断しました
5 min read
Amazon FBAは本当に儲かるのか|見落とされがちな「隠れたコスト」の正体
越境EC

Amazon FBAは本当に儲かるのか|見落とされがちな「隠れたコスト」の正体

海外のEC業界で広くフォローされているYouTubeチャンネル『MyWifeQuitHerJob』のSteve Chou氏が、Amazon FBAのコスト構造について赤裸々に語った動画が話題になっています。今回はこれらの動画の内容を日本の越境ECセラーの視点から紹介します。 Amazon FBAは本当に儲かるのか? 「Amazon FBAで稼げる」という情報はインターネット上にあふれていますが、実際のところどうなのでしょうか。Steve Chou氏をはじめとする海外のECコンサルタントたちが口を揃えて指摘するのは、表面上の売上と実際の手取り利益の大きなギャップです。Amazon FBAを検討する際には、見落とされがちな「隠れたコスト」をしっかり把握しておく必要があるといわれています。 見落とされがちな「隠れたコスト」とは ① Amazon紹介料(Referral Fee) まず最初に意識すべきコストが、Amazonへの紹介料です。カテゴリにもよりますが、売上の8〜15%程度がAmazonに徴収されます。たとえば売価5,000円の商品であれば、400〜750円がAmazo
4 min read
越境ECの配送トラブル|保険と補償、FedEx・DHL・EMSの違いを徹底比較
越境EC

越境ECの配送トラブル|保険と補償、FedEx・DHL・EMSの違いを徹底比較

以前インドネシアの金融機関で働いていたとき、上司からよく言われた言葉があります。「リスクマネジメントの基本は保険設計だ。起きてから考えても遅い」。この教えは、越境ECの配送管理にもそのまま当てはまると感じています。今回は、FedEx・DHL・EMSの補償体系と保険の仕組みについて整理します。 FedExの「100ドル補償」問題 FedExを使っている越境ECセラーが一度は直面するのが「100ドル補償の壁」です。FedExの標準サービスでは、荷物が紛失・破損した場合の補償上限は100米ドルです。2,000ドルの商品を送っていても、補償されるのは100ドルのみということです。 この事実を知らずに高額商品を発送し、破損クレームが来て初めて気づく——というセラーは実際に多くいます。「FedExが壊したのになんで100ドルしか払ってくれないんだ」という声をセラーコミュニティで何度も聞きました。 FedExを使って高額商品を発送する場合は、IP(International Priority)またはIE(International Economy)に付保オプションを追加することで、最大50
5 min read
「リミット1億円超えでアカウント永久停止」|eBay無在庫販売の光と影
越境EC

「リミット1億円超えでアカウント永久停止」|eBay無在庫販売の光と影

先日、温泉旅行で一緒になったセラー仲間から、衝撃的な話を聞きました。「年間売上が1億円を超えたあたりで、eBayから突然アカウントを永久停止された」というのです。理由は商品の品質問題でも、バイヤーとのトラブルでもなく、「全出品商品の仕入れ領収書を72時間以内に提出せよ」という要求に対応できなかったから、とのことでした。湯船の中でその話を聞きながら、私は背筋が冷たくなりました。 無在庫販売とは何か 無在庫販売(ドロップシッピング)とは、実際に在庫を持たずに商品を出品し、注文が入ってから仕入れ先から発送するビジネスモデルです。初期投資が少なく在庫リスクがないため、副業や起業初期のセラーに人気があります。eBay Japanの公式データによれば、日本人セラーの数は近年急増しており、その相当数が無在庫または半在庫モデルで運営していると推測されます。 急拡大の罠:eBayのサプライヤー証明要求 その仲間は、Amazonや楽天から仕入れてeBayで転売するいわゆる「EA転売」を中心に、わずか2年で月商800万円超にまで成長させていました。しかし成功の裏では、eBayが静かに監視の目を光
4 min read
国際輸送・税関のイメージ
越境EC

「関税100%で受取拒否されました」|越境ECセラーが知らない"関税地獄"の実態

越境ECのコンサルティングをしていると、セラーさんからよく聞く悩みの一つが「バイヤーの関税拒否」の問題です。私は、日系大手金融機関のインドネシア現地法人で4年間勤務した経験があります。当時、日本企業の現地法人がいかに意思決定に時間がかかるかを内部から目の当たりにしました。本社への過度な忖度、稟議の連鎖、「とりあえず様子を見よう」の繰り返し——。一方で、海外では業界のキーパーソンと驚くほど簡単に繋がれるという発見もありました。日本国内では到底アポが取れないような人物が、現地のビジネスイベントで隣に座っていたりするのです。 インドネシアでの4年間で現地に多くの友人もできました。その経験を通じて肌感覚として学んだのは、各国の商慣習や税制の複雑さです。「ルールは同じでも、運用はまったく違う」という感覚を現場で学んだことが、関税問題に対する実務的な視点の背景にあります。 「商品は発送したのに代金が回収できない」「返送されてきたが、また関税を払わなければならない」—そんな事例が後を絶ちません。今回は、実際にあった事例をもとに、関税拒否問題の実態と対策を整理します。 「関税100%で受け取り
5 min read