2025年以降のアメリカ越境EC|関税の混乱がセラーに何をもたらしたか

2025年以降のアメリカ越境EC|関税の混乱がセラーに何をもたらしたか

2025年は、アメリカ向け越境ECにとって「激動の年」と後から振り返られる年になるかもしれません。関税率の頻繁な変更、HTSコード管理の重要性増大、de minimis規制の見直し——これらが重なり合い、アメリカ市場でのビジネスは以前とは別物になりつつあります。今回は私が感じているアメリカ越境EC市場の変化と、セラーへの影響を整理したいと思います。

関税率の「コロコロ変わる」現実

2025年を通じて、アメリカの対日本関税率は何度か変動しました。4月の24%発表、その後の90日猶予、そして15%前後への調整——数ヶ月のうちに大きく動いたのです。この「流動性」自体がセラーにとって大きなリスクです。DDP配送で関税をセラー負担にしている場合、関税率が上昇すれば即座にマージンを圧迫します。私のクライアントの中にも、DDP設定のまま税率変更を見逃してしばらく赤字で販売し続けていた、という方がいました。

HTSコードの重要性増大と誤申告リスク

以前は「とりあえず一番近いコードで」という感覚で申告していたセラーも多かったかもしれません。しかし2025年以降、CBP(米国税関国境保護局)の審査が厳格化しており、誤ったHTSコードでの申告はペナルティのリスクを伴うようになっています。特に問題になるのが、日本製品に中国産素材が含まれる場合の原産地判定、工芸品・アンティーク・食品など境界が曖昧なカテゴリの分類、電子機器の部品分類(HTSコードで関税率が数倍変わることがある)です。

私が周りのセラーに必ずお勧めしているのは、「自分の主力商品のHTSコードを一度専門家に確認してもらう」ことです。一度正しく設定すれば、あとは変更がない限り使い回せます。

中国産商品の関税問題

日本人セラーが見落としがちなのが「中国産成分・素材を含む商品」の扱いです。中国からの輸入品には通常の関税に加え追加関税が課されており、一部カテゴリでは合計100%を超えるケースもあります。「日本から発送しているから関税は低いはず」と思っていたセラーが、原産地審査で中国製と判定されて高関税を課された、というケースを私は複数耳にしています。特に繊維製品、電子部品、日用品などは原産地確認が必須です。

セラーの米国市場離れとEU/アジアシフト

こうした状況を受け、2025年の間に米国市場から撤退または縮小し、EU・アジアにリソースをシフトするセラーが明らかに増えていると感じます。私が話を聞いたセラーの中にも「アメリカの売上が30%落ちたが、その分をドイツとオーストラリアで補えた」という方がいました。EU向けはEPR対応など別のハードルがありますが、関税という観点ではアメリカよりも予測可能です。「アメリカだけで生きているセラーは厳しい時代」という言葉が、現実を端的に表しているように思います。

CBPの貨物データ厳格化

2024年11月以降、CBPは輸入貨物のデータ要件を厳格化しています。特に「内容物の曖昧な表現」を拒否するようになっており、「雑貨」「その他商品」といった記載では通関が通らないケースが増えています。具体的に要求されるようになったのは、正確な商品名(英語での詳細記述)、HTSコード、原産国、単価と数量です。日本の物流代行業者を使っている場合でも、申告内容はセラーが最終的に責任を持つ必要があります。業者任せにせず、申告内容を自分で確認する習慣をつけることをお勧めします。

マーケットプレイスファシリテーター法の影響

アメリカでは現在ほぼ全州でマーケットプレイスファシリテーター法が適用されており、eBayやAmazonがセラーの代わりに売上税を徴収・納付しています。これ自体はセラーにとって手間が減る側面もありますが、プラットフォーム側が税務コンプライアンスを管理するようになったことで、セラーの申告情報(収入、所在地など)がより厳密に確認されるようになっています。DAC7(EU)やFATCA(米国)に基づく情報共有義務も強化されており、一定規模以上のセラーは各国税務当局への報告対象になる可能性があります。本記事は税務アドバイスではありません。日本国内の税金の詳細は税理士法人にご確認ください。

メキシコ経由の転送問題

高い米国関税を回避するため、中国製品をメキシコで加工してUSMCA(旧NAFTA)を活用しようとする動きがありますが、CBPはこうした「関税回避目的の転送」に対して厳しい目を向けています。日本のセラーが直接関係するケースは少ないかもしれませんが、使っている物流業者や代行業者が複雑なルーティングをしている場合は注意が必要です。

MoRとプラットフォームのコンプライアンス強化

eBayやAmazonは現在、多くの市場でMoR(Merchant of Record)の仕組みを強化しており、セラーの代わりに税務・コンプライアンス対応を行うケースが増えています。一見便利に見えますが、これはプラットフォームがセラーのビジネスをより深く把握・管理するようになっていることを意味します。プラットフォームに依存しすぎるリスクは、アカウント停止の問題でも触れましたが、コンプライアンス面でも同様です。MoRとして動くプラットフォームのルールが変われば、セラーはその変更に即座に対応しなければなりません。

まとめ:アメリカ越境ECを続けるために

アメリカ市場は引き続き世界最大の越境EC市場であり、完全に撤退する必要はないと私は思います。ただし、何も考えずに売り続ける時代は終わりました。HTSコードの正確な管理、関税動向の継続監視、物流業者との責任分担の明確化——これらを地道に積み重ねるセラーだけが、長期的に生き残っていけるのではないでしょうか。

手前味噌ですが、私が運営しているオプティではアメリカ市場向けのコンプライアンス整備から多市場展開戦略まで、越境ECセラーの事業全体をサポートしています。アメリカ市場で行き詰まっている、他の市場に広げたいという方は、ぜひご相談ください。