「リミット1億円超えでアカウント永久停止」|eBay無在庫販売の光と影

「リミット1億円超えでアカウント永久停止」|eBay無在庫販売の光と影

先日、温泉旅行で一緒になったセラー仲間から、衝撃的な話を聞きました。「年間売上が1億円を超えたあたりで、eBayから突然アカウントを永久停止された」というのです。理由は商品の品質問題でも、バイヤーとのトラブルでもなく、「全出品商品の仕入れ領収書を72時間以内に提出せよ」という要求に対応できなかったから、とのことでした。湯船の中でその話を聞きながら、私は背筋が冷たくなりました。

無在庫販売とは何か

無在庫販売(ドロップシッピング)とは、実際に在庫を持たずに商品を出品し、注文が入ってから仕入れ先から発送するビジネスモデルです。初期投資が少なく在庫リスクがないため、副業や起業初期のセラーに人気があります。eBay Japanの公式データによれば、日本人セラーの数は近年急増しており、その相当数が無在庫または半在庫モデルで運営していると推測されます。

急拡大の罠:eBayのサプライヤー証明要求

その仲間は、Amazonや楽天から仕入れてeBayで転売するいわゆる「EA転売」を中心に、わずか2年で月商800万円超にまで成長させていました。しかし成功の裏では、eBayが静かに監視の目を光らせていたのです。eBayは近年、VeROプログラム(知的財産保護)だけでなく、サプライチェーンの透明性確保を名目に、大量出品・高売上のセラーに対してサプライヤー情報の提出を求めるケースが増えています。「Amazonで買って発送」という仕入れ方法は領収書は取れますが、それがメーカーや正規代理店からの正規仕入れ証明になるかどうかは別問題です。

古物商許可と適格請求書:見落としがちなコンプライアンス

古物商許可

中古品を取り扱う場合、古物営業法に基づく古物商許可が必要です。無許可で古物を転売した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。eBayでの活動が日本の法律に縛られることを、改めて認識する必要があるでしょう。

適格請求書(インボイス)

2023年10月からインボイス制度が始まりました。無在庫販売でAmazonや個人から仕入れる場合、適格請求書が取得できないケースも多く、消費税の仕入税額控除が受けられない可能性があります。本記事は税務アドバイスではありません。日本国内の税金の詳細は税理士法人にご確認ください。

プラットフォームの厳格化は加速している

eBayだけでなく、Amazonも2024年以降、出品者への書類要求を大幅に強化しています。ブランド商品のゲーティング強化、仕入れ先証明書の提出要求、DAC7(EU指令)やFATCA対応のための本人確認強化、EPR(拡大生産者責任)対応の義務化——これらはすべて、プラットフォームが「場所貸し」から「コンプライアント取引の保証者」へとシフトしている証拠だと私は見ています。

無在庫販売のメリットとリスク

メリット

初期投資がほぼゼロ。在庫リスクなし。商品ラインナップの柔軟な拡大が可能。キャッシュフローが良好。市場テストが容易。これらは本物のメリットであり、特に越境EC初心者にとっては大きな魅力です。私自身もこの手軽さは理解できます。

リスク

仕入れ遅延による納期トラブル。品質管理が困難。サプライヤー証明が取れない。価格競争に巻き込まれやすい。そして「アカウント停止リスク」。積み上げてきたビジネスが一夜にして消えることを意味します。

持続可能な無在庫販売のために

温泉仲間は今、アカウント復旧の見込みはほぼないと諦めかけていると言っていました。1億円規模のビジネスが突然消えた喪失感は、想像するだけで辛いものがあります。持続可能な無在庫販売を目指すなら、正規サプライヤーからの仕入れルートの確立、古物商許可の取得、インボイス対応の仕入れ先の選定、そして売上拡大に伴うアカウントレビューへの備えが必要かもしれません。

手前味噌ですが、私が携わっているオプティでは越境ECセラーのコンプライアンス対応や事業構造の見直しをサポートしています。今のやり方で大丈夫か不安という方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

無在庫販売は確かに魅力的なビジネスモデルですが、プラットフォームの規約強化、国内法令対応、税務コンプライアンスという三重の壁を越えなければ、長期的な存続は難しいかもしれません。売るだけでは済まない時代に、私たちセラーはどう適応していくべきか——温泉の湯けむりの中で聞いたその話が、今も頭を離れません。