越境ECの返品トラブル|「偽物すり替え」「Payment Dispute」急増の実態

越境ECの返品トラブル|「偽物すり替え」「Payment Dispute」急増の実態

越境ECを続けていると、返品は避けられない課題です。しかし最近、その質が変わってきているように感じます。単なる気が変わった、サイズが合わなかったという返品ならまだしも、偽物すり替え詐欺やPayment Dispute(支払い異議申し立て)が急増しているという話を、セラー仲間からよく聞くようになりました。今回はその実態と、私が考える実務的な対策をお伝えします。

高額品の返品で関税ダブルパンチ

例えば3万円の商品をアメリカに販売し、バイヤーが返品を要求した場合、国際返送料(30から80ドル程度)、日本への再輸入時の関税(場合によっては数千円)、eBayの返品手数料(一部ケース)を負担する可能性があります。私のクライアントが経験したケースでは、3万円の陶器を返品されたところ、返送料と再輸入関税で約1万5,000円のコストが発生したと聞きました。商品自体の仕入れ原価を合わせると完全に赤字です。フリーリターンポリシーを設定していたため、返送料もセラー負担になっていたのが致命的でした。

偽物すり替え詐欺の手口

越境ECで急増しているのが、高額品の「すり替え返品」詐欺です。バイヤーが正規品を受け取り手元に保有した上で、ガラクタや偽物を返品として送り返してくるケースです。私が聞いた典型的な手口はこうです。まずバイヤーが「商品が説明と異なる」「初期不良がある」としてリターンリクエストを送ってきます。セラーが承認して返品を待つと、届いた荷物の中に明らかに別物が入っている、というものです。eBayはこのようなケースでセラー側の訴えを聞いてくれることはありますが、梱包時の写真や動画がなければ「セラーの言い分」として処理されるリスクが高くなります。

Payment Disputeの急増

近年特に急増しているのがPayment Dispute(支払い異議申し立て)です。これはバイヤーがeBayのプラットフォームを通じてではなく、クレジットカード会社や銀行に直接チャージバックを申請するもので、「不正利用があった」「商品を受け取っていない」などの名目で行われます。Payment Disputeが厄介なのは、一旦発動されると支払いが即座に保留または返金され、セラーはその後に反論資料を提出して争わなければならない点です。

Statista(2024年)によれば、越境EC全体でのチャージバック率は年々上昇しており、特に高額カテゴリ(200ドル以上)でその傾向が顕著とされています。私のクライアントの一人は「月に2から3件のPayment Disputeが来るようになった。半分は勝てるが、残りは負けてしまっている」と話していました。eBayのセラー保護制度は一定の効果はありますが、すべてのケースを救済してくれるわけではありません。

フリーリターンの罠

eBayは検索順位向上の手段としてフリーリターン(返品送料セラー負担)ポリシーの設定を推奨しています。確かに検索で有利になる効果はありますが、特に大型商品や高額品でフリーリターンを設定している場合、詐欺的返品のターゲットになりやすいという話を聞きます。私が見るに、フリーリターンは低単価の消耗品カテゴリでは有効ですが、単価1万円超のアイテムでは慎重に検討すべきかもしれません。

eBayのセラー保護制度の限界

eBayはMoney Back Guarantee(MBG)という返金保証制度を持っており、原則としてバイヤー保護が優先されます。セラー保護も存在しますが、「追跡番号付き配送」「梱包時の記録」「バイヤーとのメッセージ記録」といった条件を満たした場合に限られます。近年、人権デューデリジェンスや素材規制(EUのREACH規制、米国のCPSCなど)絡みの返品要求が増えており、含有物質が安全基準を満たしていないという名目での返品が難しい判断を迫るケースも出てきています。

実務的な対策

梱包時の写真・動画記録

私が最もお勧めするのは、発送前の梱包プロセスを動画で記録することです。特に高額品(5,000円以上)は商品の状態、シリアルナンバー(ある場合)、梱包の過程をすべて撮影しておきます。スマートフォン一台あればできますし、Dispute発生時の最大の武器になります。

バイヤーとのコミュニケーション強化

返品申請が来た際に、即座に承認するのではなく、まず「具体的にどのような問題がありましたか?写真を送ってください」とメッセージで確認することをお勧めします。詐欺目的のバイヤーはここで諦めることが多いとも聞きます。

高額品のシリアルナンバー管理

ブランド品や家電など、シリアルナンバーがある商品は発送前にナンバーを記録しておきましょう。返品された商品のナンバーが異なれば、すり替えの証拠になります。

まとめ

越境ECの返品問題は、「減らす努力」と「起きた時の対処」の両輪で考える必要があります。プラットフォーム側のバイヤー保護が強化される一方で、セラー保護の仕組みはまだ追いついていない部分があります。記録を残し、バイヤーとの丁寧なコミュニケーションを積み重ねることが、今のところ最も現実的な防衛策かもしれません。

手前味噌ですが、私が関わっているオプティでは返品ポリシーの設計やDisputeへの対応サポートも行っています。返品で損ばかりしているという方は、一度ご相談ください。