第9章 マーケットプレイス法と代理徴収

第9章 マーケットプレイス法と代理徴収 9-1 プラットフォーム課税規定の導入背景 デジタルエコノミーの拡大に伴い、外国事業者がプラットフォームを経由して韓国消費者に販売する取引が急増しました。外国の小規模出店者が申告義務を果たさないケースが多いという課税上の課題を解決するため、韓国政府は プラットフォーム事業者を納税義務者とみなす規定 を整備してきました。 9-2…

第9章 マーケットプレイス法と代理徴収

第9章 マーケットプレイス法と代理徴収

9-1 プラットフォーム課税規定の導入背景

デジタルエコノミーの拡大に伴い、外国事業者がプラットフォームを経由して韓国消費者に販売する取引が急増しました。外国の小規模出店者が申告義務を果たさないケースが多いという課税上の課題を解決するため、韓国政府はプラットフォーム事業者を納税義務者とみなす規定を整備してきました。

9-2 電子的役務提供の代理納付(仲介プラットフォーム課税)

2019年1月の付加価値税法改正により、国外事業者が運営するオープンマーケット(오픈마켓)・アプリストア等の仲介プラットフォームが、出店する外国事業者に代わってVATを申告・納付する義務を負う規定が導入されました(付加価値税法第53条の2第3項)。

この規定の対象となるプラットフォームの条件は以下のとおりです。

  • 外国事業者と韓国消費者の間に立って電子的役務の取引を仲介すること
  • プラットフォームが代金の収受・決済に関与していること
  • 対価の支払いがプラットフォームを通じて行われること

上記に該当するプラットフォーム(Apple App Store・Google Play・Steam等)経由で韓国消費者にアプリ・コンテンツを販売する日本の事業者は、当該プラットフォームがVATの代理申告を行うため、自社での申告が不要となる場合があります。ただし、直販サイトや自社アプリから直接販売する場合は引き続き自社申告が必要です。

9-3 物品販売におけるマーケットプレイス責任

2021年の付加価値税法施行令改正では、韓国国内消費者向けに物品を販売する際に仲介するECプラットフォームについても、一定条件下でVAT納税義務を負う可能性が検討・拡大されています。Coupang・Naverショッピング・Gmarket・11街(11번가)などの韓国主要ECモールに出店する外国事業者は、プラットフォームのVATポリシーを確認し、代理徴収が行われているかどうかを把握する必要があります。

Coupang Rocket(쿠팡 로켓)の場合:
Coupangのフルフィルメントサービス(Rocket Delivery)を利用する外国出店者は、Coupangが国内在庫を一元管理するため、実質的には韓国国内事業者と同様の扱いとなります。この場合、出店者自身の事業者登録と申告が必要になる可能性が高く、Coupang経由での販売開始前に課税義務を確認することを強く推奨します。

9-4 日本のEC事業者への実務的影響

韓国向けに複数のチャネルで販売を展開する日本事業者は、チャネルごとにVAT代理申告の有無を整理する必要があります。

チャネル別の申告義務整理:

販売チャネル 代理申告の可能性 自社申告要否
Apple App Store / Google Play プラットフォーム側が代理申告 通常不要
Steam(Valve) プラットフォーム側が代理申告 通常不要
自社ウェブサイト(直販) なし 必要(簡易登録申告)
Coupangマーケットプレイス(外部出店) ケースによる 要確認
Naverショッピング連携 限定的 要確認

9-5 2025年7月施行:外国デジタルプラットフォームの報告義務強化

2025年7月1日より施行される付加価値税法の改正により、外国の仲介型デジタルプラットフォーム事業者には新たな月次報告義務が課されます。具体的には、韓国の消費者との取引に関して、取引当事者の情報・取引件数・取引金額等の詳細をNTSに毎月報告する義務が発生します。

この改正は、国内プラットフォームと外国プラットフォームの報告義務を同等にする趣旨であり、仲介役としての役割を果たすプラットフォームが対象です。外国の売り手がプラットフォームを通じて供給する物品・サービスそのものの報告は対象外ですが、仲介サービスに関する取引情報の提出が義務化されます。

報告義務に違反した場合、最大2,000万ウォン(約14,300米ドル相当)の罰金が科される可能性があり、プラットフォーム事業者は対応体制の整備を急ぐ必要があります。日本のEC事業者にとっても、利用するプラットフォームがこの報告義務に適切に対応しているかを確認することが重要なチェックポイントとなります。

9-6 プラットフォーム側への確認事項

外国事業者がプラットフォームの代理申告に依拠する場合も、以下の点を自社で確認・管理することが推奨されます。

  • プラットフォームが韓国VATを実際に代理申告しているかの書面確認
  • 月次・四半期ごとの売上明細(韓国向け)のダウンロード・保管
  • 自社申告が必要なチャネルとプラットフォーム代理申告チャネルの明確な区分
  • プラットフォームのVATポリシー変更に関するモニタリング

VATコンプライアンスの責任は最終的に事業者にあります。プラットフォームの代理申告を過信せず、自社のリスク管理体制を維持することが重要です。