越境ECで「何も決まらない」が続く理由|要件定義の重要性
先日、前職時代の後輩と久しぶりに会いました。彼は今、大手戦略コンサルティングファームで働いています。近況を聞いてみると、「最近はずっと要件整理ばかりやっている」と言うのです。
要件整理——つまり、クライアントが何をしたいのか、何が課題なのかを整理する作業です。要件定義の一歩手前、と言ってもいいかもしれません。ヒアリングを重ね、資料をまとめ、報告書を作る。しかし結局、1年間かけて要件を整理しても何も決まらず、翌年またゼロから要件整理をやり直す——そんなプロジェクトが珍しくないそうです。
大手コンサルだからこそ成り立つビジネスモデルなのかもしれませんが、数千万円を費やして「要件をまとめただけ」で1年が終わるとしたら、それは本当にクライアントのためになっているのでしょうか。
要件整理と要件定義の違い
要件整理と要件定義は似て非なるものです。
要件整理は、現状の課題やニーズを「並べる」作業です。「こういう課題がある」「こういうことをしたい」というインプットを集めて分類する。重要ではありますが、それだけでは何も前に進みません。
一方、要件定義は、整理された要件をもとに「何を、いつまでに、いくらで、どうやって実現するか」を決める作業です。ここにはスコープの確定、優先順位の判断、予算の確保、スケジュールの策定、そして「やらないこと」の決断が含まれます。
多くのプロジェクトが前に進まない理由は、要件整理から要件定義への移行ができないことにあるように思います。
越境ECでも同じことが起きている
これは大手企業のITプロジェクトだけの話ではありません。越境ECの世界でも、驚くほど似たような状況を目にすることがあります。
オプティにご相談にいらっしゃる企業様の中にも、以下のような状態のまま「とりあえず相談したい」とおっしゃるケースが少なくありません。
・どの国に展開するか決まっていない ・予算が決まっていない ・訴求方法(どのチャネルで、何を、誰に売るのか)が決まっていない ・スケジュールは「なるはやで」 ・対応範囲は「できる限り」
どれもふわっとしていて、具体的なアクションに落とし込めない状態です。
なぜ日本企業のプロジェクトは「決まらない」のか
これは越境ECに限った話ではなく、日本企業全般に共通する傾向かもしれません。
一つの仮説として、日本の企業文化には「誰かの首が飛ぶ」ような厳格な責任追及の仕組みが薄い、という背景があるように思います。プロジェクトが遅延しても、予算を超過しても、致命的なペナルティが発生しにくい。だから「もう少し検討しましょう」が延々と続けられてしまいます。
また、仲間内でビジネスを行う文化が強いため、お互いを厳しく追及しにくいという面もあるのではないでしょうか。「予算はいくらですか」「いつまでにやりますか」「それは本当にやる意味がありますか」——こうした直球の問いを投げることが「失礼」とされがちな環境では、要件がいつまでも固まらないのは構造的な必然とも言えます。
海外の企業やファームと仕事をすると、この違いは一層際立ちます。彼らは「スコープは何か」「デッドラインはいつか」「バジェットはいくらか」を初回ミーティングで確定させようとします。そうしなければプロジェクトが始められないからです。
それでも、一歩踏み出す方法はある
とはいえ、「全てが決まってから動く」のでは永遠に始められないのも事実です。
重要なのは、最初の一歩を小さく、しかし確実に踏み出すことではないでしょうか。予算を明確にし、目的を絞り、限定されたスコープでまず動いてみる。その結果をもとに次のステップを判断する。このアジャイル的なアプローチが、越境ECの税務対応においても有効だと考えています。
全ての国のVAT登録を一度にやる必要はありません。まずは売上が最も大きい1カ国から始める。全ての規制を同時に整備する必要もありません。まずは最もリスクが高い領域から対応する。そうやって少しずつでも前に進めることが、1年後の「また要件整理からやり直し」を防ぐ唯一の方法だと思います。
Buildプラン——20万円で「最初の一歩」を踏み出す
手前味噌ですが、オプティではこのような課題意識から「Build」というプランを用意しています。
大手企業向けのコンサルティングであれば、要件整理だけで数百万〜数千万円の費用が発生することも珍しくありません。しかし、越境ECに挑戦する中小企業にとって、それは現実的な選択肢とは言えないでしょう。
Buildプランは20万円(税別)で、以下を達成することを目的としています。
・現状の棚卸し:どの国で、何を、どのチャネルで販売しているか(または予定しているか)の整理 ・税務義務の特定:対象国ごとのVAT/GST/Sales Tax登録義務、EPR、GPSRなどの規制要件の洗い出し ・優先順位の策定:リスクの大きさと事業インパクトに基づく対応優先順位の決定 ・概算見積もり:各対応項目の費用感とスケジュールの概算提示 ・アクションプランの作成:「次に何をすべきか」が明確になるロードマップの策定
つまり、「要件整理」で終わらせず、「要件定義」まで到達し、具体的なアクションプランを手元に持って帰っていただくことがBuildプランのゴールです。
「何から手をつければいいかわからない」という段階から、「これをこの順番でやればいい」という状態に変わる——その最初の一歩を、できるだけ手の届く価格で提供したいと考えて設計しました。
海外企業はプロフェッショナルにお金を払う
オプティは海外のIT企業の日本進出支援も行っていますが、そうしたクライアントと仕事をしていて感じるのは、要件定義にきちんとコストをかけようとしてくれる姿勢です。「まずは要件を明確にしましょう。そのためのフィーはいくらですか」——こういう会話が自然に成立します。
海外の企業が成功している要因はさまざまですが、その一つは、プロフェッショナルの専門知識に対してきちんと対価を支払うという姿勢にあるのではないでしょうか。知見を持つ人に適正な報酬を払い、その代わりに質の高いアウトプットを期待する。この循環がイノベーションとスピードを生み出しているように思います。
翻って日本では、「まずは無料で教えてほしい」「情報だけもらって自分でやりたい」という姿勢が目立つことがあります。もちろん慎重さは美徳ですが、結果として専門家に相談するタイミングが遅れ、問題が大きくなってから駆け込む——というパターンに陥りがちです。
btraxのブログ「日本企業が海外進出する際に乗り越えるべき10のハードルとは?」でも、日本企業の決断の遅さやリスク回避の傾向が指摘されています。シリコンバレーに行脚して視察だけして帰ってくる——という話は、越境ECの税務対応においても全く同じ構図ではないでしょうか。
問題の分解と整理から始めませんか
越境ECの税務・法務対応は、一見すると巨大で手に負えない課題に見えるかもしれません。しかし、問題を分解し、整理し、優先順位をつければ、一つひとつは対処可能なタスクに変わります。
もしよろしければ、ぜひオプティのサービスをご検討いただけませんか。「何から手をつければいいかわからない」という段階からでも、Buildプランを通じて最初の一歩を一緒に踏み出すことができます。
Buildプランの詳細はオプティのサービスページをご覧ください。