EORI番号とは何か|越境EC事業者が知っておくべき基礎知識と今後のタイムライン
越境ECでEU向けに商品を販売していると、必ず遭遇するのが「EORI番号」という言葉です。私自身、外資系ファームで欧州に滞在していた頃、EU域内の物流と通関の仕組みを学ぶ中でこの制度の重要性を痛感しました。一見すると難解に見えるEORI番号ですが、越境EC事業者として欧州市場に参入するなら、避けて通れない基礎知識です。この記事では、EORI番号の基本からよくある疑問、そして今後のEU規制の変化まで、実務的な観点からご説明します。
EORI番号とは何か
EORI番号とは、Economic Operators Registration and Identification numberの略称で、日本語では「経済事業者登録識別番号」と訳されます。EU域内で輸出入を行うすべての事業者に割り当てられる固有の識別番号で、2009年にEU規則(EC)No 312/2009によってEU全域で導入されました。
番号の構成はシンプルで、国コード(2文字のアルファベット)+最大15文字の番号という形式です。例えばドイツで取得した番号であれば「DE123456789000001」のような形になります。この番号は、EUの税関システムにおいて事業者を一意に識別するための基盤となっています。
EU統計によると、EUの域外貿易(輸出入合計)は年間約4兆ユーロ規模に達しており、この膨大な貿易量を管理するためのインフラとして、EORI番号は欠かせない存在となっています。
なぜEORI番号が必要なのか
EORI番号が必要とされる理由は、大きく4つあると思われます。
まず、税関申告への必須要件という点です。EU向けに商品を輸出・輸入する際の税関申告書には、EORI番号の記載が義務付けられています。番号がなければ申告そのものができないため、実務上の最優先事項といえるでしょう。
次に、VAT番号との紐付けです。輸入時には消費税(VAT)の支払い義務が発生しますが、EORI番号とVAT番号を紐付けることで、税務当局が適正に課税状況を把握できる仕組みになっています。
3つ目は貨物のトレーサビリティ確保です。テロ対策や不正貿易防止の観点から、EU当局は貨物の流れを詳細に把握する必要があります。EORI番号によって、どの事業者がどんな貨物を動かしているかが追跡可能になります。
最後に、AEO(Authorized Economic Operator:認定事業者)認定との連携です。AEO認定を取得すると通関手続きが簡略化されるなどの優遇措置を受けられますが、この申請にもEORI番号が必要です。
誰がEORI番号を取得する必要があるか
越境EC事業者として、以下のようなケースではEORI番号の取得が必要になると考えられます。
まず、EU域内の倉庫に在庫を送る場合です。Amazon FBAを利用してドイツやフランスなどのEU加盟国の倉庫に商品を搬入する場合、輸入者(多くの場合、Fiscal Representativeを通じた事業者)にEORI番号が必要です。Amazon FBA利用者にとっては、事実上必須の番号といえるかもしれません。
次に、EU域外(日本など)から直接EU消費者に販売する場合です。この場合、税関申告は通常、Fiscal Representative(財政代理人)や配送業者が行いますが、彼らもEORI番号を持っています。ただし、事業者自身がインポーターとして登録される場合は取得が必要です。
なお、IOSSを利用した150ユーロ以下の小口B2C販売については、IOSSスキームの下では輸入VAT免除となるため、必ずしもEORI番号が不要なケースもあります。しかし、150ユーロ超の商品や、B2B取引が含まれる場合は別途必要になります。事業規模の拡大を考えているなら、早めに取得を検討してもよいかもしれません。
EORI番号の取得方法
EORI番号の取得先は、EU加盟国の税関当局です。重要なのは、1つの加盟国で取得すればEU全域で有効だという点です。したがって、ドイツで取得した番号をフランスやスペインでの貿易にも使用できます。
実務的には、VAT登録を行った国で同時にEORI番号を取得するケースが多いようです。例えばドイツでVAT登録をするなら、ドイツの税関当局(Generalzolldirektion)にEORI番号も申請するという流れです。
日本企業の場合、EU域内に拠点がないため、現地のFiscal Representativeを通じて申請するのが一般的です。取得自体は無料ですが、Fiscal Representativeへの依頼費用(年間数十万円程度が相場とされます)が発生します。
EORI番号とVAT番号の違い
EORI番号とVAT番号はしばしば混同されますが、用途が異なります。
EORI番号は通関・物流用の識別番号です。輸出入の際に税関申告で使用します。一方、VAT番号は税務用の識別番号で、EU域内での付加価値税(VAT)の申告・納付に使います。
多くの場合、EU向けの越境EC事業者は両方が必要になります。例えば、ドイツのAmazon FBA倉庫を使う場合、EORI番号(税関通過のため)とドイツのVAT番号(VAT申告のため)の両方が求められます。
今後のEU規制の変化と越境EC事業者への影響
EORI番号を取り巻く規制環境は、今後数年で大きく変化する見込みです。越境EC事業者として把握しておくべき主要なタイムラインをご紹介します。
まず、ICS2(Import Control System 2)の全面施行です。EUが進める事前申告義務の強化策であり、航空・海上・陸上貨物のすべてに対して、EU入域前の詳細な事前情報申告が求められるようになります。これにより、EORI番号を持つ申告者としての役割がより重要になります。
次に、ViDA(VAT in the Digital Age)です。OSSやIOSSの仕組みが拡大される方向で検討が進んでいます。デジタル申告の普及により、EORI番号とVAT番号の連携がより緊密になる可能性があります。
2028年には、EU税関改革の一環として新しいEU Customs Authorityが設立され、データハブの構築が予定されています。税関データの一元管理が進むことで、EORI番号を軸とした事業者情報の統合管理が強化されると思われます。
また、CBAM(炭素国境調整メカニズム)との関連も無視できません。鉄鋼、アルミ、セメント、肥料、電力など特定商品の輸入には、EORI番号の保有に加えてCBAM報告義務が課されます。対象商品を扱う越境EC事業者は特に注意が必要かもしれません。
UCC(Union Customs Code:EU関税法典)も継続的に改正が行われており、デジタル化・効率化の方向で手続きが変化しています。定期的な最新情報の確認をお勧めします。
越境ECセラーへの実務的アドバイス
ここまでの内容を踏まえ、私が越境EC事業者の方々に伝えたい実務的なポイントをまとめます。
第一に、Amazon FBAを利用してEU倉庫に在庫を置いているなら、EORI番号は基本的に必須と考えてください。番号なしには貨物のEU入域ができません。
第二に、IOSSを使って150ユーロ以下の小口販売に特化している場合は、現時点でEORI番号が不要なケースもあります。ただし、事業拡大(高額商品への展開、FBA活用など)を考えているなら、早めに取得を検討してもよいかもしれません。手続きには一定の時間がかかるため、必要になってから慌てるより、余裕を持って動く方が賢明です。
第三に、取得自体は無料ですが、Fiscal Representativeへの依頼費用が発生します。信頼できるFiscal Representativeを選ぶことが、その後のEU事業運営を左右するといっても過言ではないかもしれません。
手前味噌ですが、オプティではEORI番号の取得からVAT登録まで一貫してサポートしています。欧州市場への参入を検討されている越境EC事業者の方は、ぜひオプティのサービスページもご覧ください。複雑な手続きをワンストップで対応できる体制を整えています。
EU向け越境ECは、規制の複雑さゆえに参入障壁が高いと感じる方も多いと思われます。しかし、EORI番号やVAT番号などの基礎をしっかり押さえ、信頼できるパートナーと組むことで、欧州市場は日本の越境EC事業者にとって大きなチャンスとなるはずです。