「2年連続で税務署から"お尋ね"が来た」|eBay輸出セラーの消費税還付、何が問題だったのか

税務・確定申告のイメージ

仲の良い越境ECセラーと情報交換をしていると、最近よく聞くのが消費税還付に関する税務署からのお尋ね問題です。私は米国に留学していた時期に、日米の税制度の違いをリアルに体感した経験があります。当時、アルバイトで稼いだわずかな収入に対しても、日本とはまったく異なる申告の仕組みに直面し、「税制は単なるルールではなく文化だ」と感じたと感じました。その感覚が、越境ECにおける税務を机上の知識ではなく実務的な文脈で捉える姿勢の原点になっているのかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務アドバイスではありません。オプティは税理士法人ではないため、日本国内の税金に関する個別の判断や詳細については、必ず税理士法人にご確認ください。

eBayをはじめとする越境ECで商品を海外に輸出しているセラーにとって、消費税の還付は重要な資金繰りの一部です。しかし2023年後半から、還付を受けているセラーへの税務署からのアプローチが増えているように感じます。

税務署から「お尋ね」が2年連続で届いたケース

あるセラーさんの話です。年商3,000万円ほどのeBay輸出専業で、四半期ごとに消費税の還付申告をしています。2022年から2023年にかけて、2年連続で税務署からの「お尋ね」文書が届いたそうです。

「最初の年は、仕入れの証憑(領収書・レシート)を整理して送ったら特に問題なく終わりました。でも2年目は担当者が変わったのか、かなり細かく聞いてきて…」とのこと。具体的には、フリマアプリでの仕入れについて、どのような証憑を保管しているかを問われたそうです。

国税庁のデータによると、2022年度の消費税還付申告件数は約34万件で、そのうち輸出免税に関連するものが相当数を占めると見られています。税務署としても、不正還付への警戒感が高まっているのではないでしょうか。

インボイス制度開始後の「フリマ仕入れ」問題

2023年10月にインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まり、フリマアプリで仕入れをしているセラーに混乱が広がりました。問題は「経過措置の80%控除」の適用範囲です。

複数の税理士の間でも見解が分かれているのですが、一般的に言われているのは次のような解釈です。1万円以下の少額仕入れについては経過措置が適用される可能性がある一方、1万円を超える仕入れについては適格請求書のない取引として扱われ、控除が制限されるという見解があります。

ただしこれはあくまで一つの解釈であり、個々の状況によって異なる場合があります。「同じ状況なのに税理士によって言うことが違う」という声をセラーさんから何度か聞いています。

「先月うちにも税務調査が入りました」

より深刻なのは、実際に税務調査が入ったケースです。あるセラーさんは「先月うちにも税務調査が入りまして、還付の一部を返還することになりそうです。覚悟はしていましたが…」と話してくれました。

そのセラーさんの場合、問題となったのはフリマアプリでの高額仕入れ(1件5万円〜10万円)でした。適格請求書が取れない取引先からの仕入れが多く、インボイス制度施行後の仕入税額控除の計算に誤りがあったとのことです。

越境ECの消費税還付の仕組み

改めて基本を整理しておきます。日本の消費税では、国内での仕入れには10%(または軽減税率8%)の消費税がかかりますが、海外への輸出売上は消費税が免除(ゼロ税率)になります。

このため、輸出専業または輸出比率の高いセラーは、支払った消費税(仕入税額)が受け取った消費税(売上税額)を上回り、差額が還付されることになります。年商3,000万円の輸出セラーであれば、年間200万〜300万円の還付を受けているケースも珍しくないと思われます。

税務署が重点的に見ているポイント

① 仕入れの証憑の保管状況

領収書・レシートが実際に保管されているか、電子データの場合は電子帳簿保存法の要件を満たしているかが確認されます。フリマアプリの取引履歴はスクリーンショットや取引明細のダウンロードで対応できる場合がありますが、これが「適切な証憑」として認められるかは状況によります。

② 売上と仕入れの整合性

輸出売上と仕入れの金額的な整合性が見られます。仕入れ額に対して売上が著しく低い場合(仕入れのほとんどが在庫になっているような状況)は、説明を求められることがあります。

③ 還付額の妥当性

売上規模に対して還付額が大きすぎないか確認されます。輸出比率が高ければ問題ありませんが、国内販売と輸出を混在して行っているセラーは、比率の計算が適切かどうかを精査されることがあります。

適格請求書なしの仕入れをどう扱うか

フリマアプリや個人からの仕入れでは、適格請求書(インボイス)が入手できないケースがほとんどです。この場合、インボイス制度の経過措置として、2023年10月〜2026年9月の間は仕入税額の80%を控除できる特例が設けられています(2026年10月〜2029年9月は50%)。

ただし、この経過措置の適用を受けるには帳簿への特定記載が必要です。「80%は使えると思っていたが、帳簿への記載がなくて否認された」という事例も聞いています。細かいルールを正確に把握することが重要です。

今すぐできる5つの対策

・仕入れの証憑をすべて整理し、デジタルでバックアップしておく

・フリマ仕入れについては取引履歴を定期的にダウンロードして保管する

・インボイス登録事業者からの仕入れと未登録事業者からの仕入れを帳簿上で区別する

・経過措置の80%控除を適用する場合は、帳簿に「80%控除対象」と明記する

・四半期還付申告を行っている場合は、申告内容を税理士と定期的に確認する

まとめ

「お尋ね」が来ても、証憑が整っていれば基本的には問題ありません。大切なのは、日頃からの記録管理です。税務署が見ているのは「不正」ではなく「証明できるかどうか」です。証明できる体制を作っておくことが、越境ECセラーとしての基本的なリスク管理ではないでしょうか。

手前味噌ですが、オプティでは越境ECの消費税還付・インボイス対応・税務調査対策に関するご相談を承っています。「お尋ね」が来てから慌てるのではなく、事前に体制を整えておきたいという方はお気軽にご相談ください。

※重ねてのお願いとなりますが、本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の税務アドバイスではありません。消費税還付を含む日本国内の税務に関する具体的なご判断は、税理士または税理士法人にご相談ください。